この記事を書いている時点では僕は35歳で、約3年ぶりに転職活動した。活動期間は2024年11月末~12月末の約1ヶ月間だった。結果は無事、第1志望の会社から内定を頂き、2月から次の会社で働く。
今回の転職活動の動機が今までと少し違う毛色だったので、自分の心境の変化など鮮明な記憶が残っているうちにブログに書き残そうと思う。
これまでの転職の動機
まずは今回の動機を語る前に、これまでの転職の動機と実際に転職した結果を雑に列挙してみる。
振り返ってみると、今までの転職の目的はザックリ言って「今より年収を上げる」「次の数年後に転職するときに更に高年収の会社へ転職できるようにエンジニアとして成長できる環境を得る」と年収UPがメインだった。
余談であるが、「SES => 自社サービス」への転職が一番人生にインパクトがあったと思う。SESに比べて、信じられないくらい自由な自社サービスで働いて、とてつもないカルチャーショックを受けたのを覚えている。もう10年近く前の話になるので、当時に比べてSESの環境も改善されているとは思うが、SESに戻ろうとは1mmも思わないぐらいSESは試される大地だと思う。(個人の経験に基づく超個人的な意見です)
転職1回目 (SES => 自社サービス)
- 動機
- 当時勤めていたSESへの不満
- 薄給
- 客先常駐の辛さ
- 毎日スーツ着用が辛い
- 新人より仕事できない謎のおじさんがなぜかよくいる
- 残業多い
- 炎上している現場への火消し要員で、定時後に別の現場に召喚される
- 支給される低スペックPCで、激重Excel/Eclipseの作業では頻繁なフリーズタイムが発生して虚無
- うつ病で休職 -> 復職を繰り返す先輩を見て、心の健康の大事さを知る
- その他、色々ある
- 自社サービスへの期待
- 私服OK
- 自由な開発環境で働けそう
- 提供しているサービス内容が楽しそう
- 当時勤めていたSESへの不満
- 結果
- 給料が少し上がった。(年収20%↑ぐらい)
- とても自由に働けて環境が良かった
- 支給されたPCもMacBook Proでサクサク動いたし、椅子も10万円以上するそれまで使ったことがないような高品質なオフィスチェアだった
- とてもモダンな開発環境になった
- Git/AWS/Slack/Zoomなど、今では当たり前と感じるツールやパブリッククラウドに初めて触れた
- サービスの新機能についてディレクター・デザイナーと一緒に企画の段階から検討MTGで意見を出し合いながら開発できた
- 社員旅行でシンガポールに行けたのは楽しかった
- 会社の人と仲良くなり今でも年1~2ぐらいで飲み会している
- 残業皆無
転職2回目(自社サービス => メガベンチャー①)
- 動機
- 段々と社内でオフショアが流行ってきて、仕事が減っていく気配を感じていた
- Webのエンジニアとして働くのが好きだったので、もっとエンジニアとしてレベルアップできる会社が無いか興味が湧き出していた
- 転職エージェントに相談して、提案してもらった求人の中に誰もが知っているメガベンチャーがあり、記念受験みたいな感じで応募したら運良く内定が貰えた
- 結果
- 給料が結構上がった。(年収40%↑ぐらい)
- 貴重な大規模トラフィックがあるAPIの開発経験を積めた
- 初めての大企業で色々新鮮だった
- 必須のコンプライアンス研修や、その他好きに受講できる研修が多くあり、研修が充実している
- 外部から著名な人を呼んで講演をしてもらったり、ただ定期的に受講する必要があるものが結構あるので大変
- 初めてボーナスだけで100万円を超えて驚いた
- 以前はニュースの「今年の冬のボーナスの平均は80万円でした」みたいなのを見て「ほんまかいな」と思っていたが大企業では当たり前だったのだ
- 必須のコンプライアンス研修や、その他好きに受講できる研修が多くあり、研修が充実している
- 優秀な方が多く、彼らの積極的な取り組みなどを見ながら働けたので、とても良い刺激を多くもらえた
- 社員が多いのでSlackには色々なチャンネルがあり、それらの中で行われるやり取りを見るだけで面白かった
- オフィスがとても立派で一等地にあったので、出社するとちょっと誇らしくなる
- ただ、個人的にはこの満足感は一過性のもので、結局年収の高さの方が重要だと感じた
- とてもコンプライアンスやSLAに厳しく、開発・運用にあたり結構なプレッシャーがあった
- 定時後に障害が発生して緊急で対応する場合も結構あった
- 残業はほぼなし
- 見込み残業代込みの給料になっており、わざわざ金にならない残業をする気になれないので、定時でさっさと帰るのだ
転職3回目(メガベンチャー① => メガベンチャー②)
- 動機
- 当時の会社で使っている技術がプライベートクラウドや内製のツールなどが多く、一般的に使われているパブリッククラウドなどの技術のノウハウが欲しくなった。よりモダンな開発へのノウハウを得ることで効率的な開発が行えるエンジニアになれることを期待していた。
- メガベンチャー②では社内のグローバル化を目指しており、段階的に英語を公用語に切り替えて行く方針だった。ここで英語を習得することで将来的に高給な外資ITへの転職も視野に入ることに魅力的に感じていた。
- 結果
- 給料が結構上がった。(年収30%↑ぐらい)
- 前職に比べて色々なSaaSを活用しており業務効率化を図っている環境だったので良い刺激を受けた
- 英語学習のサポートがあり、最初はTOEIC対策でReadingとListeningを行い、それをクリアするとSpeakingといった段階的な学習ロードマップなど準備されていた
- サポートのお陰で、当初TOEIC600点台だったのが、700点後半を得れるぐらいまで成長した
- スピーキング力を測るCEFRという指標でB1という中級者レベルを表すランクも取得できた
- (ただ、これはProgosというアプリを使って計測するのだが、たまたま取れたって感覚なので、あまり胸を張れない)
- またグローバル採用に携わる機会もあり、実際に自分のチームにNon-JPのメンバーを2名採用した。その後、自分のチームではMTGは英語で話すことになり、拙いながらも英語を喋る機会が強制的に発生し少し英語力が成長したのを感じた
- ここでも優秀な方が多く色々と刺激を貰った。また驚いたのはインターンを積極的に受け入れており、インターン生もとても優秀な方が多く、日本の将来は明るいかもしれないと感じた
- (ただ、メガベンチャーのインターンに来れる学生は上澄みの優秀層だと思うので、現実はそうイージーではないと思う。実際に有名大学の方が大半だった。)
今回(4回目)の転職の動機
どのような心境の変化やその過程で考えていたことを思い返してつらつら書いてみたが、結構長くなってしまった。
簡単に説明すると、「外資IT目指さなくても、今のままで十分に食っていけることに気づいたので、給与所得ではなく事業所得を上げる作戦に変更した」である。
そして、今の会社ではやりたいことを実現するのは難しかったので、次の転職先を探すために色々と条件を整理した。
以下は、この結論に至った過程をダラダラ書いているので興味があれば見てください。
当初のモチベーション
上述したようにメガベンチャー②に入社した理由には、「外資ITに転職して年収大幅UPするために英語を身につける」ためだった。
実際に入社して2年目ぐらいまでは、そこそこ英語を真面目に勉強して、実際に少しずつであるが英語でのコミュニケーションに慣れてきた実感があった。
次のステップを考えるとまずは、もう2〜3年英語を使いながら今の仕事をこなして英語力を上げる。
その次に外資IT特有のコーディング試験対策、システムデザイン面接対策、行動面接対策など多くの対策をする必要がある。
子どもがいると自分の時間がない
先述した対策に時間を割く必要があるのだが、このとき3人目の子どもが生まれて、ますます自分の時間を確保するのが難しくなっていた。
また数年前からオンラインプログラミング講師の副業も行っており、これもそこそこ自分の時間を食う。
そのため、育児/本業/英語学習/副業で1日が終わってしまい、体力的にしんどくなっていた。
ここに先述した対策にも時間を割かないといけないと考えると、気持ちが沈んでしまった。
今の会社に入るために、上記の対策をある程度やった経験はあるのだが、外資ITのレベルを考えると更にもう2段階ぐらいしっかりやる必要があり、そこそこ時間が掛かることが想定できる。(しかも英語で対策するので、更に時間がかかりそう)
頑張って外資IT目指さなくても食っていけるのでは?
入社当初は子どもが3人いるので、外資ITに転職して現在より500万以上年収を上げないとやっていけないんじゃないかと勝手に思っていたが、実際はメガベンチャー②の年収でもなんとかなりそうな気がしてきた。
理由はメガベンチャー②に入社してから3年で資産が3000万以上増えており、これのおかげで将来の不安が大分減った。
やったことは生活費以外をベタな投資信託に突っ込んでいるだけである。まあ、ここまでプラスなのはここ数年の円安と米国株高のおかげなので、この資産の伸びが継続的に続くわけはないのは分かっている。
ただ今後、今まで通りに投資を継続し10%前後で投資信託が伸びていくことを考えると、外資ITへの転職対策に家族と過ごせる貴重な人生の時間を費やさなくても良いんじゃないか?という考えが出てきた。
高所得者のデメリットは?
ここで、外資ITへの転職モチベーションを下げるため、高所得者のデメリットを調査し始めた。
子育て系の補助金について
Xで高所得者になると子育て系の補助金が無くなってしまうという話題が目についたので雑に調べてみた。
ふむふむ、自分の場合は長男が4歳なので直近関係ありそうなのは、児童手当と高等学校等就学支援金である。
まあ、長男が高校に入るまで12年ぐらいあるので、現時点で気にする必要はなさそうだ。
将来的には制度自体が廃止されているか条件が変わっていると思うので、真剣に考えるのは10年後ぐらいで良さそう。
ただ、世帯年収をコントロールしやすい雇用条件で働いていれば柔軟に対応できそうであると思った。
| 補助 | 条件 | メモ |
|---|---|---|
| 児童手当 | 所得制限なし | 令和6年10月から所得制限が撤廃された |
| 高等学校等就学支援金 | 世帯年収が910万円未満であること | |
| 大学生への補助 (授業料の減免、給付型奨学金) | ・扶養する子どもが3人以上いる世帯 ・世帯年収が約600万~700万円 | 色々と制度があるように見えるので正確には理解できなかった。 どうせ10年後には条件・内容が変わってると思うので、そこまで真剣に見る気も起きなかった |
社会保険は給与所得に比例して大きくなる
社会保険は色々とあるが、一番ウェイトを占めているのは厚生年金と健康保険である。
こいつらは、どうやら4・5・6月の給与支給額から標準報酬月額というのが算出されて、それを基に保険料率とゴニョゴニョ計算して決まるらしい。
なので、正社員として得る給与所得が高ければ、それに比例して社会保険に掛かる費用も高くなる。(上限は年収1200万ぐらいらしい)
社会保険は多く払っても享受できるサービスの質は上がらないどころか、健康保険においては高額医療費の上限額が年収に応じて少なくされるかもしれない話も出てたりする。つまり、無駄に多く払っても良いことは無いのだ。(厚生年金は支給される年金が増えるのでリターンはあるが、そもそも入金した分を取り戻せるまで、しぶとく生きている必要があるので微妙。そもそも自分の世代が元を取り返すのが難しい気がする。)
事業所得を上げても社会保険には影響がない
先述したように数年前から副業をしており、そこで得た収入は個人事業主として事業所得として毎年確定申告をしている。社会保険の算出方法を知り、事業所得が関与していないことを恥ずかしながら最近知った。
そこで思ったのは、給与所得を今ぐらいの水準のまま社会保険料を上げず、事業所得を増やして、上手く経費を使ったほうが可処分所得が増えそうなのでは?
改めて正社員として働く会社へ求めることを考えてみる
ここまで考えて、完全に外資ITへの道を諦めることを決意した。
そうすると、メガベンチャー②で働くモチベーションが無くなり、改めて自分が何がしたいのかを整理してみた。
副業をやりやすい環境
まずは、先に整理したように「事業所得を今以上に稼げる環境」は確定だ。
これをもっと具体的にすると「副業に寛容的であること」「副業に時間を費やせる」だと思う。
メガベンチャー②では「副業は月30時間以内とする」というルールがあり、これは一部寛容しているが完璧ではない。つまり「副業に寛容的であること」とは「副業を許可しており、特に制限が無い」ことが自分の期待値である。
また「副業に時間を費やせる」は、「週休3日制を取り入れている」という条件になると考えた。今までより1日でも時間が空けば、個人開発などに使えるはずだ。それに家族との時間も増やせるかもしれない。週休3日の未来を想像すると将来の選択肢がとても増える気がしてテンションが上ってきた。
事業所得を増やす手段はどうする?
次に事業所得を増やすために、具体的に何をするか考えてみたが、結局自分はWebエンジニアでWebアプリを作るのが楽しいと感じる。自分で好き勝手に自分がヘビーユーザーになるようなアプリを開発して収益を得られるのが、一番ストレス無く理想的である。
自分がヘビーユーザーになるようなサービスはtoC向けになるはずなので、toC向けのサービスの開発に携わることでSEO対策や広告の扱い、A/Bテストなど個人開発に活かせるノウハウも得られるはずだ。
今までの開発経験は主に社内プラットフォーム開発やtoB向けの開発だったため、「toC向けのノウハウを得られる会社」にしようと思った。
結論
これで、次の転職先に求める条件を整理できた。
しれっと年収とフルリモートの条件を追加しているが、これは現状の生活レベルを維持できること。
また子どもが3人いるため出社が辛くなってきたと感じたことからMUSTの条件として追加している。
- 副業を許可しており、特に制限が無い(MUST)
- 週休3日制を取り入れている(MUST)
- 可能であれば稼働日と収入をコントロールできたら最高(WANT)
- toC向けのノウハウを得られる会社(MUST)
- 現在の年収以上であること(MUST)
- フルリモート(MUST)
情報収集のために求人サイトを活用
幸運にも先述した条件すべてに合う会社はすぐに見つかった。ただ、見つかったのはその1社だけだったので、本命はこの1本と決めて半年ほど時間をかけて準備を行った。
また年収交渉する際に事前に自分の市場価値を知っておきたかったので、下記のエンジニア御用達の求人サイトに登録して、どのようなポジション・年収レンジでスカウトされるか情報収集をした。
- LAPRAS
- Findy
- 転職ドラフト
LAPRASとFindyは似たような企業から似たようなポジション・年収でアプローチされた。おおよそ年収700~1200万ぐらいのレンジが多かった。
転職ドラフトは月1で行われているドラフト会議で下記のような指名を貰った。こう見ると年収800~1000万弱のレンジで想定しておくと良さそうだと思った。
実際に今回の転職先のオファーもそのレンジのほぼ上限に収まった。(週5で働いた場合の計算、今回は週4で働くので、それより20%より低くなる)

さいごに
「Webエンジニアは外資ITを目指すのがスキル・年収・ステータスにおいて理想である」、という論調はXでは流行っていると思う。自分もその考えには概ね賛成である。
今回自分はその道を目指していたが、諦める選択をした。ただ特に後悔は無く、どちらかというと自分のライフステージに合った選択をしたと思っており、2月から始まる週休3日を楽しみにしている。
また転職先のサービス自体も今まで携わった業務に比べて、身近で親しみがあるので開発に携われることがとても楽しみである。
35歳という気軽に転職するには今まで通り行きづらくなる年齢でもあり、キャリアパスに悩まれている方も多いと思う。そのような方に、この記事が1つの転職事例として参考になれば幸いである。

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